お母さん人形。

妻が旅行に行っている間のこと。

娘が言い出した。

「枕にお母さんの服を着せる」

どうやら、何か作るらしい。

使うのは、妻が普段使っている枕。

娘は妻の服を何枚か持ってきて、一枚ずつ匂いを嗅いでいた。

「これじゃない」

「こっちがいい」

何でもいいわけではないらしい。

最終的に選ばれたのは、黒いユニクロのTシャツと、青いリラコ。

このあたりで、娘が作っているものの名前が判明した。

「お母さん人形」

なるほど。

娘は妻の枕にリラコを履かせた。

そして、途中までできたお母さん人形を持って、廊下にいる私のところへやってきた。

「おとうさん手伝って」

私は歯磨き中だった。

しかも、筋膜ローラーを背中に当てて、廊下でゴロゴロしているところだった。

いったん歯磨きを中断して、お母さん人形の製作に加わる。

私の担当はTシャツ。

着せていると、娘から指示が入る。

「シャツはズボンに入れて」

「枕は首のところまで持ってきて」

と、なかなか細かい指示。

言われたとおりに整えていく。

「おー」

「できた」

完成した。

顔もなければ、手も足もない。

黒いTシャツと青いリラコを着た、妻の枕。

これがお母さん人形かー。

娘は完成したお母さん人形を抱っこして、テレビを見始めた。

私は歯磨きに戻った。

その夜、娘はお母さん人形を抱っこして寝た。

翌朝も抱っこしていた。

気に入ったみたいで、よかった。